現在、地球環境を取り巻く、様々な問題点が指摘されています。それぞれが、分散されたニュースとして流れているだけに、狭い範囲にて問題を検討しがちですが、これは、すべて関連性がある問題なのです。右図は、この関連性の図解ですが、右と下の課題は、経済産業省が扱う国内問題、上と左の課題は、環境省が扱う国際問題。課題を俯瞰し、どのような視点でとらえるかがポイントです。
2010年11月、地球温暖化問題を取り上げた「COP16」が、メキシコのカンクンにて開催された。また、その前月には、生物多様性をテーマにした「COP10」が、名古屋で開催されたことは記憶に新しい。地球環境問題に関しては、過去において「リサイクル」や「省エネルギー」などの言葉が、メディアをにぎわしてきたが、最近では「自然エネルギー」や「レアアース」などの言葉が聞かれるようになってきた。
これらは、一見、別々な問題として、取り上げられているようにみえる。しかし、どことなく繋がっているのではないか、と感じている人は多いことだろう。そこで、エネルギー関連の企業向けの資料のひとつとして、これら地球を取り巻く環境問題を、図解で整理してみた。
視点1: 環境に関する基本の軸を考えてみよう。最初の手掛かりとして生物の多様性を生み出しているのは、地球上の自然界であることから、この自然界の循環を軸として考えてみた。人類は、これらの自然界の産物から工夫を重ね新たな製品に創り出した。近年、問題となっている汚染や温暖化は、生物にいろいろな影響を及ぼしている。ここでこの影響を取り込み、シナリオを作っていくと全体循環の図式が出来上がった。これは、アブダクション、演繹法、帰納法による図解作成法ともいえる。
人々は、自然からの恵みを取り入れ、生産活動と消費活動を行い、最終的に不要なものを廃棄する、という資源循環型社会を形成している。本図解は、問題の関係性に着目していることから、詳細な部分に関して不整合があることを前提にしているが、このモデルに沿って、地球環境問題に関する図解を眺めるといろいろなことがみえてくる。
本図解を、想いだすための「想起モデル」は、エコロジーの「E」。上の横軸③は天上の環境、下の横軸②は地下の環境、左の縦軸④は自然の中に存在する資源。右の端から消費した後の廃棄物や排気ガスを自然に戻す、という構造が、わかりやすい。
◆廃棄物汚染問題とリサイクル法
高度成長期に伴って、最初に発生した問題は、廃棄物により地下が、排気ガスにより大気が、汚染されてしまったことだ。大量消費社会のツケである。この問題に対しては、製造と消費の段階で、極力、再使用、再生していくための「リサイクル法」(右側①)が制定された。
◆化石資源枯渇問題と省エネルギー法
次に発生した問題は、石油資源の枯渇問題である。
ここでは「省エネルギー法」(下側②)が制定された。製造や消費の段階で使用される化石起源エネルギー全体を絞るという発想だ。
◆地球温暖化問題と温暖化対策法
また、地球上の気候変動に対する懸念から、「温暖化対策法」(上側③)が検討され、太陽や風力エネルギーに代表される自然エネルギーへの関心が高まってきた。
◆希少資源争奪を巡る貧困問題と生物多様性
さらに自然の産物の希少性や絶滅を危惧することから「生物多様性」(左側④)に関する会議が開かれるようになった。生物多様性に関していえば、希少な資源は、自然環境が豊富な開発途上国に多く、先進国の搾取により貧困を招いているという問題も大きなテーマとなっている。
◆国際問題と国内問題の切り分け
本図解により、右側①と下側②が「国内問題」であり、上側③と左側④が、国内問題を含む「国際問題」であることがわかる。上下の温暖化対策法と省エネ法に関していえば、その共通のテーマが、脱化石燃料であるにもかかわらず、管轄する省庁が経済産業省と環境省であり、さらに地方自治体の規制が加わってきている。
みえないところに境界を引くのが世の常とはいえ、規制される企業側では、混乱の度合いが増しているようだ。いずれにせよ、これら地球環境問題の対応は、それぞれ関連付けて対応していくことが大事であることを痛感した次第である。
視点2: 関連する分野での現状を、条例や世界情勢を個別に調べ、さらに基本の軸に付け加えていく。ここでは「循環」をキーワードとして着眼したことが、まとめるポイントになった。覚えやすいメタファー(想起モデル)をイメージしながら形を整えていくことで、図式をいつでも思いだせる状態でできる。
★日本のエネルギー消費の現状
福島の原発事故により、原発の安全神話はもろくも崩れ去りました。今後、国内はもとより世界各国々において、原発の反対運動が起こるとともに、国内にて計画されている多くの原発も凍結されることになるでしょう。今回の災害は、日本人の文化や道徳感の高さが多いに注目されたものの、国内での電力確保のためのエネルギー戦略を見直さなければならない状況でもあるともいえます。
★省エネルギー規制のポイント
●1,500kl未満の企業の義務は、 [①基準の遵守②年間1%以上の省エネ]のみになります。●1,500kl以上の企業では、事業所の種別を区分しなければなりません。また①②の義務に加え、エネルギー管理統括者を1名置き、さらに行政によりチェックを受けなければなりません。 工場を併設している場合には、さらに左図の表のようにキメ細かく規制されます
★事業所におけるエネルギー
企業では、売上を伸ばすと同時に、コストを削減し、利益の向上を目指します。財務管理部では、会社法に則り、この利益から税金を納めます。エネルギーに関しては、これまで法的拘束がなかったことから、あまり着目されていませんでしたが、温対法によるCO2削減、および省エネ法による管理者設置と届け出など、義務が発生するようになりました。今後は、「エネルギー管理部」のような名称の部門により管轄する必要性があるでしょう。「省エネルギー法(省エネ法)」は、経済産業省の資源エネルギー庁の管轄。「地球温暖化対策基本法(温対法」は、環境省が管轄しています。以下の「排出権取引」および「オフセットクレジット」は、温対法での取り組みです。「グリーン電力証書」は、自然エネルギーによる発電に関する証書ですので、資源エネルギー庁の支援のもと、電力会社が間接的に取り組んでいます。
★CSRへの取り組み(バランススコアカードの進化形)
経営戦略策定法のひとつとして「バランススコアカード(BSC)」という手法が、多くの企業で採用されています。今後は、これまでの4つの視点に加え、「社会貢献」や「エネルギー」の観点が必要となってくるでしょう。特に、創エネや省エネに代表されるエネルギー問題の解決が、社会貢献にもつながる、ということが大きなポイントといえます。
★電気の契約って複雑でよくわからない...
最近は、CO2削減推進のためのオール電化住宅に対応した「電化上手」契約が増えてきたようです。夏場の日中の電気同時使用による電力不足を補うため、低価格な深夜料金を含め、夏季日中向けの料金が設定されました。本一覧表は、時代とともに設定された電気料金契約の推移も表わしています。
★ヒートポンプと燃料電池ってなんですか?
最近、よく聞かれる言葉に「エコキュート(ヒートポンプ)」と「エネファーム(燃料電池)」があります。テレビなどの広告をみていると、双方とも「空気からお湯を作る」ということに変わりはありませんが、「エコキュート」は「電力会社」、「エネファーム」は「ガス会社」を始め、エネルギー関連各社が主体となって活動しています。
視点3: 作成した一覧図(仮説)に対して、それぞれの分野での情報や社会の仕組みを紐解き、検証とともに不足点を補う。